呼吸書房

書籍表紙装画:佐野裕一さん

夜が明けると、村に人間は一人もいなかった。少年は、昨日まで人間だった蛾や蝙蝠や蛙の群れを引き連れて、森の奥へ帰っていった。彼らを近くの水辺に放し、昨日まで人間だった様々な種は、すべて母の根元に蒔いた。やがて、その一帯は花が咲き乱れ、蜜に誘われた鳥や獣の歌声で、いつまでも賑わうようになったという。

呼吸書房へようこそ。当サイトでは、私、風野湊による作品を公開しています。
路上で出会った本棚のように、どうぞゆっくりとお楽しみください。

書斎と書店、二つの意味を持つ「書房」の名のとおり、
一部の作品は書籍化し、販売を行っています。
出店イベントや委託販売先でもご購入頂けます。

update:
2025.12.25 イベント情報更新、寄稿小説「クリスマスを奏でた後に」追加
event:
2026.1.18 文学フリマ京都10|京都市勧業館「みやこめっせ」 1F 第二展示場 B-21 呼吸書房→Webカタログ
blog:
2025.12.31 2025年12月の活動報告

book-list

書籍情報

これまでに執筆・制作した書籍の一覧です。
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夜が砂丘を登ってくる。追いつかれる前に登頂しようと、私は足を速めた。夜の歩幅は広い。高さ数百メートルに及ぶこの大砂丘も、まもなくすべて夜に沈むだろう。一足ごとに、美しい風紋を踏み崩す。安定を失った砂は音もなく斜面に沿って流れ落ちる。初めは急速に、やがて緩やかに、遥か下まで。それは小川のようにも見え、けれども入日の深い茜に照らされた今は、むしろ出血を連想させた。一呼吸のあと、振り返って見下ろせば、砂漠の底は既に夕闇に包まれていた。

profile

自己紹介

ペンネーム:風野 湊(かざの みなと)。1990年4月29日生。旅先で猫を愛でつつ読書に耽れたら幸福。
バックパックにかならず詰めるのは、宮沢賢治詩集、長田弘紀行文、P.ロスファス『風の名前』。
執筆のお供はポメラDM20からMacBook Airに変わりました。書きつづけています。
→もっと詳しく(aboutページへ)

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