先だってmisskeyに投稿していた、山川夜高さんの文学フリマ東京38新刊『ファング』読書日記&ネタバレ感想をブログ上でも公開します:)
投稿時はmisskeyで公開することしか考えていなかったため文体がだいぶラフ&同書を読了済みの方向けです。ゆるい気持ちでお読みください…笑。
『ファング』について
1989年の高円寺を舞台とした、架空のロックバンドの伝奇小説。山川さんの個人サイト上で連載されている「Drive to Pluto」シリーズの関連作品です。
取材に基づいた、リアリティ溢れる“あの頃”の高円寺に、ロバート・ジョンソンのクロスロード伝説が交差する、とてもスリリングな短編でした。
(あの印象的なイントロダクション、どこかで機会があったら朗読してみたいです…)
🎸『ファング』通販のおしらせ#文学フリマ東京 新刊・バンドマンの青春の終わりを書いた小説『ファング』の通販を行います。ほか「(作者による)ネタバレ禁止期間」の情報もこちら。
— 山川夜高/新刊通販中 (@mtn_river) May 20, 2024
※本作は創作バンド『Drive to Pluto』のシリーズ作品です。
ブログ👉 https://t.co/1V60fHqJwe https://t.co/DbTn0xUWh3 pic.twitter.com/ExXneA3Eu6
当日の読書日記
(元ノートはこちら: https://misskey.design/notes/9tkt10vqx9 )
文学フリマ東京38当日——店番を代わってもらいお買い物に出た。30分ほどでガッと第二展示場を周り(第一展示場は断念)、スペースに帰還。その後もしばらくバタバタしていたが、15時頃にようやく一息つけたので、今回購入した本を休憩がてら手に取った。その中に山川さんの新刊『ファング』もあった。
ロバート・ジョンソンと悪魔と十字路にまつわる印象的なイントロダクション(これは事前に公開されていた)を経てページをめくった。
がらんどうの六畳一間、強烈な西日、あきらかにやばそうな何者か、冒頭からめちゃビジュアル的につよいパンチが来たな……と思いながら下段に視線を移したとたん「木場太陽」の文字が目に飛び込んできた。
あ゛!!!????
(二度見)
え゛!!!!!!????
皆さんあの…薄々察してた方もいらっしゃると思うんですけど、私は全く予想していませんでした。節穴ァ!!!
今回の登場人物みなさん全員新キャラだと思ってたよォ。。。
でもあの、言われてみたらこう、バチバチーッと回路が繋がるというか、木場=牙=ファングという意味の持たせ方に、公開されていた逆光イラストのどこかで見たようなギターストラップ、いや〜〜〜ヒントはいっぱい出てましたね……私はまったく気づかなかったんですけど
なおこちらが当日の狼狽の様子です
https://misskey.design/notes/9tgos0q459
https://misskey.design/notes/9tgov3w1dm
これは…これは、店番しながら読むのは無理ではないか……と思いながら、我慢できず10ページくらいまでチラ読み。
木場太陽さん、Drive to Pluto関連作品でときどき現れる、どこか保護者の気配を纏う、掴みどころのない飄々とした大人……にも当然ながら青春の日々はあったんですよね、当たり前のことですが。
文フリ閉場後、山川さんと合流し、アフターのお店へ行く道すがらで続きを読む。中央線で読む『ファング』、リアリティがさらにヤバい。土日の中央線快速は高円寺に止まらないためただ通過するだけですが……
読み終わる前に吉祥寺へ到着。久しぶりにお会いした藤見さんも交え、大いに飲み食いした後、音楽演奏が始まったことを良いことにテーブルでそのまま『ファング』を読む私。
読み終える私。
お、終わ……終わ……??
木場太陽さん………
泥酔していたためこの辺りの記憶が曖昧なのですが(白目)、木場太陽さんのフルネームを連呼しながらお隣の原作者ご本人山川さんに「イラストお持ちなんですよねえ!!?? イラスト出してくださいよぉ!!!」とダル絡みをした覚えがあります。ド反省。
その後もたしか感想を熱弁したのですが、
テンション上昇とともに血行がめちゃくちゃ良くなったらしく、
ワインが急激に回り、
それまで元気だった体調が急転直下し、““““おしまい””””になりました。
こんな……酒に慣れてない大学生みたいな潰れ方を……(白目)
トイレで跪きながら神に祈りました。神はいない。
改めての感想
(元ノートはこちら: https://misskey.design/notes/9tlgyf324a )
木場太陽さんのこと大好きになっちゃったな………。
1989年、わたしはまだギリギリ生まれてなかったんですけど、伝聞で伝え聴くあの時代、恋愛と性愛の消費文化ピーク、誰も彼もがゲレンデに行ってたんでしょ?というイメージがあるあの季節
(でも調べたら「ロマンスの神様」は1993年リリースだった ちょっと後か)
そんな時代に彼らは高円寺にいたんですね
二十代後半、27歳という、モラトリアムでいられた学生時代から遠く離れ、各々が働き(あるいは働けず)、生活に格差がすこしずつ開いてくる、苦みのある年代……
鬱屈とした思いはありつつ時代と運に恵まれて案外うまくやっているひとと、堅実にコツコツと地に足ついてるひとと、暗くまばゆい才能はあっても生活が崩壊しつつあるひと、という、それだけでも充分に社会派文学になりそうな題材に、
クロスロードと悪魔の伝説がぶちこまれるんですねえ。。。(白目)
音楽に疎い私でさえうっすら知っている、クロスロードには才能を授ける悪魔がいるという伝説
なにかしら創っている人間なら、どうか悪魔よ現れて才を授けてくれないかと一瞬でも願ったことのない人の方が少ないと私は思っているんですけれど(主語デカ)、ここでその悪魔めいた存在が『ほんとうに』物語に入りこんでくるところが、山川さんの小説だな〜〜としみじみ思います
丹念に取材された実在の街、実在する東京なのに、幻というか魔術めいた存在が立ち現れる余地がある
このあたりは都市伝説やオカルトとの接続とも言えるでしょうか
サブリミナルが仕込まれたCM、呪いのビデオ、世紀末の気配、お茶の間に流れる新興宗教、etc、etc ……
(思えば私がこのあたりの概念に馴染みがあるのは『MOTHER2』のおかげですね 閑話休題)
ヒサシさんのモノローグ/回想を挟みつつ、確実な不穏を漂わせながらも進んでいく文体はまあ心地よいのですが、十字路で辻さんが出てくるところでこう、その心地よさがそのまま凍りついて首筋にナイフ当ててくるんですよね………
わたし10%くらい辻さんが普通の人間である可能性に縋っていました ガチだよこの“何か”
太陽さんがこの“何か”の手を取ってしまったに違いないこと、リフレインする冒頭の「売っぱらった」なる台詞の重み。
このクライマックスにおいて、ヒサシさんが“それ”の手を取らなかったこと。
あ゛あ゛〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
いや…そうだね…青春の終わりだね………
あなたとともにずっと一緒にいくことはできない、あなたといっしょに破滅することはできない、生活、生活……
一周目は呆然として理解が及んでなかったのですが、最後まで読んでから改めて読み返すと、木場太陽さんが“それ”の手を取ってしまった後に「ひとりは寂しいな」と、彼らも破滅の祝福に道連れとしようとしたことがたいへん心に響きます
「いっしょに来てくれると思ってたのになあ」!!!
木場太陽さんのこと大好きになっちゃったな(二回目)
太陽さんが売り払ってしまったものが、もし魂なるものだとするならば、彼はいつかの未来の死後にひとりでどうなってしまうんでしょうか オオン……
彼らの享受した才能と幸運(奇跡的な演奏、商業的な成功、そして体調の回復)が、なにか取り返しのつかない破滅によってもたらされたということにゾクゾクするんですけどね
でもそれ以上に、それが、その資産が、2001年に誰かの居場所を作ることにもなっているという二面性が、やばいなあと思います(語彙力)
なんだろう、破滅だけではない、なにか荒涼とした明るいものというか……ねえ……
まだしつこく木場太陽さんの話をするんですけど
DtP本編の2001年時点で、木場さん39歳?で合ってますか?
青春のおわりにそんなものすごい鮮烈な光と影を身の内に抱えた彼が、
いまは「社長のバンドの話も初耳」と言われるくらい音楽演奏からは遠ざかって、
ファイネッジレコーズとして後進のバンドを大切にしているんですか………???
ヤベェ(語彙力)
あのね、だってさ、破滅した大人っていっぱいいるじゃないですか 若者を搾取して使い潰す大人が、この世には山ほど
そこまではいかずとも、権力を笠に着たハラスメントとか、あまりにも有りふれた話じゃないですか
木場太陽さんが、そういう大人にはならず、若者たちの支えになり、彼らに慕われているということに、
なんか…この世って破滅ばかりではないのかもしれないな……と思いました(重い)
おしまい!!
(音楽についてほぼ触れられずすみません ニック・ドレイクは今も聴いています)
PS:
「コールサック」って「石炭袋」か…と後から気づきました(callかと思ってた)
死んではないけど一緒にもいけない銀河鉄道の夜〜〜!!