呼吸書房

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書籍情報

これまでに執筆・制作した書籍の一覧です。表紙を選択すると詳細が表示されます。

『walking postcard vol.12』

2025.11.23刊行

【個人連載雑誌 / 第12号 / A5 / オンデマンドフルカラー表紙 / 72ページ / 小部数・再版予定なし】

『walking postcard』は、呼吸書房が2018年11月から発行している小さな雑誌です。
書き手はひとまず私ひとり。
一冊の本にまとまる前の、小説や旅行記、短編や掌編、散文、詩、独り言などなどを、
旅先から送る便りのように、気の向くままに、自由に、お届けできたらと思っています。


the letter from an "rain forest"

現在執筆中の長編『すべての木陰に歌を』から、第一部「彼女について」を先行掲載します。
本当は2025年中に刊行したかったのですが、もうすこし時間が掛かりそうなので……申し訳ない。現在は第三部の終盤を執筆中です。

『すべての樹木は光』の続編となる『すべての木陰に歌を』は、樹木に変えられてから127年後、魔法が解けて人間に戻ったユハの物語です。 分量はおよそ37000字、物語全体の三分の一ほど。
彼女が辿りついた遠い未来の風景を、どうぞお楽しみください。
そして、どうかユハの物語を最後まで見届けて頂けますように。

赤い足跡はまっすぐに森を貫き、どこまでも、どこまでも続いた。木漏れ日にきらめく鮮血のように艶やかでありながら、彼女の素足に踏まれても擦れず、滲まず、肌を汚しもしない。その歩幅は広く、枝葉や板根に行手を塞がれようとも、ただ先へと進んでゆく。時折、転んだような形跡があった。形の崩れた足跡と、赤い手形。地面に手をつき、跳ね起きて、また駆けていったのだろう。誰かが。どこかへ。
「どこに行くの?」
何かが彼女に声を掛けた。彼女は立ち止まらなかった。言葉を失った者にとって、その声は、鳥の囀りや、蛙の輪唱と同じものでしかなかった。
木陰に双眼が光り、歩きつづける娘を目で追った。