呼吸書房

すべての木陰に歌を

書籍情報

『すべての木陰に歌を』表紙イメージ

【長編小説 / 四六判 / オンデマンドフルカラー表紙 / 246ページ】

新たな芽を。魔法を。何度でも。

揺らぐ森、うつくしい森、夜が明ける頃のこと。
一本の樹木が静かに傾ぎ、人間へと変わっていく。
長きに渡る変身の魔法は終わりを告げた。
樹木に変えられてから百二十七年の時が経ち、彼女を覚えている者はもう誰もいない。
はるかな遠い未来、長い旅路の果てに、彼女はようやく思い出す。
かつて手放した魔法のことを。

◇ ◆ ◇

架空の熱帯雨林を舞台とした樹木変身譚、『すべての樹木は光』の続編をお届けします。
樹木に変えられた人間の、魔法が解けたその後を描く幻想(ファンタジー)小説です。
人間だけではない世界の風景描写に触れたい方、幻想と共に歩みたい方、かつてどこかで願いを手放したことがある方へ。

前作冒頭から百二十七年後の世界が舞台であり、登場人物も(主人公のユハを除き)ほぼ新たな顔ぶれなので、前作未読でもお読み頂けます。作中では前作の結末などへの言及が含まれる点にご留意ください。
前作刊行から六年が経ちましたが、作中ではさらに長い年月、百二十七年もの時間が経過しているため、前作の風景をうっすらと覚えてくださっていれば、お読みいただくのに支障はありません。

前作『すべての樹木は光』冒頭の変身シーンはこちらで試し読みを公開しています。
本作は、ユハが樹木に変えられてから百二十七年後、その変身の魔法が解けるところから始まります。


<本編目次>

第一部 彼女について
   1 トゥーリ
   2 キオ
   3 ライラ

第二部 揺らぎの庭
   4 ユハ
   5 トゥイ
   6 変わり者
   7 反転

第三部 夜の木陰を渡り
   8 孤絶
   9 樹木たち
  10 雨と星
  11 あなたに歌を

それは、かつて魔法で樹木に変えられた娘だった。彼女の周囲には、居場所をなくしたものが次々に降りそそいだ。鳥の巣、羊歯の葉、苔と地衣類、それは、娘が樹木だったとき、その身体に抱えていたものだった。巣立ち前の雛鳥は墜落の衝撃で死に、羊歯の葉は折れ、蘭の花は砕けた。樹洞に暮らした蟻の群れは散り散りとなり、今しも蜘蛛に喰われるところだ。土壌と根を繋ぐ無数の菌根菌も、もう娘を助けはしない。
百二十七年ぶりの呼吸に激しく咳込む背中に、朝日が触れた。
おはよう、ユハ。

Special Thanks
表紙装画:佐野裕一さん https://x.com/sunamerius
ジャケットデザイン:山川夜高さん https://libsy.net/